代表メッセージ
渚のはなし ― すきまを埋める 〜法人化10周年によせて〜
私たちすんぷちょは、社会の中に生まれるさまざまな「すきま」に目を凝らし、アートを通して、人と人、人と社会の間をつなぐ活動を続けてきました。
NPO法人として歩み始める際、当時せんだい演劇工房10-BOXの工房長であった八巻寿文さんから、「すんぷちょは渚であれ」という言葉をいただきました。海と陸のあわいである渚には、多様な自然の恵みが集まり、豊かな生態系が育まれています。すんぷちょもまた、どちらか一方に定まるのではなく、多様性を大切にしながら進んでいってほしい、という願いが込められていました。
この言葉を折に触れて思い出しながら、私たちは10年間活動を続けてきました。震災からの復興、予想もしなかった感染症の流行など、社会は大きく変化し続けています。その中で私たちは、「すきまを埋めるダンス」のように、活動の形を変えながら歩んできました。
「すきまを埋めるダンス」とは、二人一組で、相手のポーズの中にある隙間を見つけ、自分の身体でそこを埋めていく即興のダンスです。相手をよく観察し、自分なりの「すきま」を見つけ、その都度自分を変えていく。このとき求められるのは、どこにでも行けて、何にでもなれる、渚のような曖昧さです。この感覚は、制度や支援からこぼれ落ちてしまう声に耳を傾け、柔軟に応答していく私たちの活動そのものだと感じています。
振り返れば、この10年、明確なロードマップがあったわけではありません。社会の変化や、出会った人々の声に導かれながら、走り続けてきた実感があります。これからの10年も、きっと同じように「すきま」を見つめ、形を変え続けていくでしょう。ただ一つ違うのは、これまでに積み上げてきた活動と、そこで育まれた多くの人との関係性があることです。
それらを土台に、アートがもつ柔軟性や多様な価値観が、一人でも多くの人にとって「より良く生きる」ための糧となるよう、これからも活動を続けていきたいと考えています。この歩みに関心を寄せ、ともに関わってくださる方が増えることを、心から願っています。
この活動は、特別な誰かだけでなく、
関心を寄せ、ともに考えてくださる一人ひとりの存在によって支えられています。
もし、すんぷちょの歩みに共感していただけたなら、
寄付というかたちで関わっていただくこともできます。
皆さまからのご支援は、活動を続け、広げていくための大切な力になります。
(代表 及川多香子)

