2022-09-10

子どもの心を育む演劇の祭典、宮城野区から幕が上がる。/すんぷちょ代表:及川多香子

宮城野区子ども舞台芸術祭フラットシアターフェスティバルvol.1が、いよいよ1週間後に迫ってきました。演劇や人形劇、親子コンサートなど8作品の他、芝生エリアでの工作ワークショップや紙芝居など、芸術の秋をめいいっぱい体感できる2日間になっています。フェスティバルスタッフは最後の追い込み準備で息切れしつつも、子どもたちを迎えるわくわく感が、次第に高まってくるのを感じています。

私が児童青少年演劇というジャンルに出会ったきっかけは、大学在学中に訪れた「キジムナーフェスタ(国際児童青少年演劇フェスティバルおきなわ)」です。現在は「りっかりっかフェスタ」と名前を変えています。ボランティアとして参加したこのフェスティバルで、滞在中は国内外の優れた児童青少年向け作品を1日に2〜3本観劇し、その世界の豊かさ、子どもたちが輝くような表情で舞台を見つめる姿に、心を奪われました。特に国外の作品、ベルギーやイギリス、チリなど、世界的にも活躍するカンパニーの作品は、子どもを対象としながらも、決して子どもに媚びず、多くは言葉をあまり使わずに、それぞれの世界観で子どもたちを包み込んでおり、素晴らしいものばかりでした。国内作品では人形劇団やクラウンなど、たくさんの劇団があることを初めて知りました。優れた舞台作品に子どもの頃から触れ、心揺さぶられる経験ができるフェスティバルを、いつか自分の出身地である仙台で出来たらと、当時ぼんやり思い描いていました。

10数年がたち、そのスタートラインにいま立とうとしています。さあこれからが大変です。第一回目を始めたら、第二回目、第三回目、、、五周年!りっかりっかフェスタのように地域に定着するためには、続けていかなくてはいけません!いづれは国際作品も招聘できたら、仙台市宮城野区が世界の舞台作品への入り口になるかもしれませんね。

すんぷちょは設立以来、様々な人たちと活動を続けてきました。というよりも、作品創作でも、短時間のワークショップでも、なるべく色々な人がいた方が断然面白い!という価値観のもとに活動した結果、障害のある人もない人も、子どもも大人もごちゃまぜな人たちに支えられてきたのだと実感しています。それならば、すんぷちょが主催するフェスティバルも、インクルーシブで、ごちゃまぜで、出演者、観客、スタッフ問わず、様々な人が関わる・関わりやすいフェスティバルにしよう、という発想から、「フラットシアターフェスティバル」が生まれました。具体的には、文化庁障害者芸術推進事業の委託事業として、多感覚演劇の創作と上演や、舞台手話通訳付きの人形劇の上演、聾者と聴者が共につくる人形劇団デフ・パペットシアター・ひとみの招聘など、第一回目からたくさんの方々のご協力で開催を迎えようとしています。

今年のテーマは「いっしょに いこう ものがたりの せかい」です。コロナ禍において、子どもたちは様々なものに「隔てられる」生活をしていると思います。特に障害がある子どもや、医療的なケアが必要な子どもたちは外出もままならない期間が長期に達していると耳にします。せめて劇場の中では、「いっしょに」観劇し、笑って、はらはらして、どきどきして、ほっとして、プロフェッショナルなアーティストと物語の冒険に出発してほしい、という願いを込めました。

むかし、子どもだった大人も「いっしょに」楽しみましょう。いつだって心の中には子どもがいます。それを思い出させてくれるのが、舞台芸術なのだと思います。

出演カンパニーのみなさん、スタッフのみなさん、そしてご来場いただく観客のみなさん、準備はいいですか?第一回目のお祭りにようこそ!

NPO法人アートワークショップすんぷちょ 代表 及川多香子

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